『甲竜伝説ヴィルガスト オリジナルサウンドトラック』 ガシャポンから世界観へ:メディアミックス黎明期の「世界観主義」 この『甲竜伝説ヴィルガスト』は、実に興味深い出自を持つ作品です。そのルーツは、バンダイの**「ガシャポン(カプセルトイ)」。小さなフィギュアからスタートし、漫画、OVA、そしてゲームへと展開していった、メディアミックスの黎明期を象徴するタイトルの一つです。 アニメ研究家としてこの作品を位置づけるならば、これはまさに「世界観主義」の波が、より「ハイファンタジー」の領域にまで浸透していった証左と言えるでしょう。80年代のロボットアニメが、メカニックやSF設定の密度で世界観を構築したのに対し、『ヴィルガスト』は、剣と魔法の世界を舞台に、多様な種族や複雑な人間関係、そして邪神との戦いを描くことで、観客を異世界へと誘いました。 本作のOVAは、原作の壮大な物語の一部を切り取った全2巻の構成であり、このサウンドトラックは、その世界観を音楽面から強力に支えています。 田中公平の「熱」と「魂」:ファンタジーの定型を越えて 本作の音楽を担当したのは、後に『サクラ大戦』や『ONE PIECE』などでその名を轟かせる田中公平氏。 このサントラ最大の聴きどころは、田中氏の**「熱血」かつ「魂」**のこもった音楽が、王道ファンタジーの世界観と見事に融合している点です。 トラックに並ぶ「燃えない炎」「突撃!ユキア」「決まった運命」といったタイトルが示す通り、流麗なストリングスと管楽器を多用し、戦いと冒険の躍動感をこれでもかと描き出しています。特に戦闘シーンのBGMは、ただ勇ましいだけでなく、ファンタジー世界特有の**「叙事詩的」なスケール感**を感じさせ、キャラクターたちの運命を背負った戦いをドラマティックに盛り上げています。 90年代声優ソングの「透明感」 そして、このCDを単なるBGM集で終わらせないのが、劇中のヴォーカル曲の存在です。 久川綾(クイ役)と横山智佐(レミ役)による主題歌(本CDではショートサイズなどが収録)は、当時の女性声優ソングが持つ「透明感」と「伸びやかさ」を凝縮した佳曲です。 *CDケース擦れあり
17 小時前